ニュース詳細

2026/10/09 17:30

【秋の味覚】神々の愛した「栗」と、漆黒の珍味「黒皮茸」

秋が深まり、油の爆ぜる音が心地よく響く季節となりました。
当店のカウンターで、今まさに目の前で揚げる特別な二つの秋の味覚をご紹介いたします。

万葉の昔より伝わる「栗」のありがたみ

私たち日本人にとって、栗は単なる旬の味覚ではございません。
『万葉集』の中で山上憶良は「瓜食めば 子ども思う…」に続き、「栗食めば まして偲はゆ」と詠みました。栗を口にすると、愛しい我が子の顔がなおさら愛おしく思い出される――それほどまでに、栗は古来より栄養価が高く、家族の健康を願う「ありがたい宝物」でした。平安時代には飢饉を救う植物とされた歴史もあり、冬を前に「山の神様から生命力を分けてもらう」という意味が込められています。

当店では、この大粒の栗を低温でじっくりと時間をかけて揚げてまいります。薄衣の中で自身の水分によって蒸し上がった栗は、ほくほくと力強い甘みが引き立ちます。

通を唸らせる幻の珍味「黒皮茸(クロカワ)」

マニアックな山菜通の間で「松茸より好きだ」と熱狂的なファンを持つのが、野生の「黒皮茸」です。

漆黒で無骨な見た目からは想像もつかない、「心地よいほろ苦さ」と「濃厚な旨味」が最大の特徴です。絶妙な火入れで天ぷらに仕立てることで、外はサクッと、中は驚くほど瑞々しくジューシーに仕上がり、衣の中に大人の苦味とコクが凝縮されます。

古くからこのキノコには、アルコールの分解を一時的に抑える性質があるとされ、「黒皮茸を食べると、いつもよりお酒の回りが早くなる」と言い伝えられてきました。それほどまでに、お酒の肴として罪深いほど相性が良いという先人たちの粋な逸話です。ぜひ、当店の厳選した日本酒をお手元に、ゆっくりとご堪能ください。


いにしえの人々が感謝して食した栗の甘みと、山深くの自然が育んだ黒皮茸の贅沢な苦味。
お互いを引き立て合う、この時期だけのコースの逸品でございます。

今宵も皆さまの目の前で、最高の瞬間を揚げてお待ち申し上げております。